されど2千円。
昨年末の夜、店に70代の女性が訪ねていらっしゃいました。
どのようなご用件かと尋ねると、
「ここの息子さんですか?わたしはあなたのお父さんの同級生です。
今は諫早に住んでるのですが、車で帰るところガソリンが無くなりかけてるのにお金の持ち合わせがありません。
2千円貸していただけませんか?」
・・・・・・・!
とっさに思考があわただしく動き始めました。
本当に父の同級生なのかな?
悪い人ではなさそうに見えるけど、初めて会う人に2千円貸すのってどうなんだろう?
ここで書くのは恥ずかしいくらいの裏の裏まで考えてしまいましたが、困ってらっしゃる様子なので早く結論を出さないといけません。
そこで私の結論。
「少々お待ちください。」
さっと奥に走っていき、すぐに玄関にもどり
「2千円では心細いでしょう、3千円お貸ししますよ」
と、お貸しすることにしました。
「ありがとうございます。助かります。来月には必ずお返しします。」
と、その女性は車で去って行かれました。
一応、名前と連絡先は聞きましたが、まったく面識が無いしなんの保障もありません。
もし返ってこなくても、金額が金額なので請求する気にもなりません。
母に名前を伝えても聞いた事がないと言います。
心の中ではあのお金は寄付したつもりでいようと自分に言い聞かせてました。
年末の書き入れ時、忙しさでそんなことは忘れてしまっていたある夜。
「こんばんは~。いらっしゃいますか?」
私は仕事で手がふさがっていましたので、母が玄関に出ました。
「息子さんにお世話になりましたって、渡さしたよ。」
と、3千円入った封筒と、手紙、そして手作りのティッシュ入れ。
あ、あの時の女性だ!
顔が赤くなりました。
お金をお貸しした時は少しは信じてたのに、その時は返ってくるものとはまったく思ってなかったのです。
あわてて玄関向かうと案の定、あの時の女性。
「先日はありがとうございました。おかげで家に帰り着く事が出来ました。お父さんは言いたいことは言う人だったけど、根はやさしかったもんね~。さすがあの人の息子さん」
と、褒めていただきました。
なんだか私も亡くなった父に親孝行できたような気がしました。
きっかけは2千円ですが、思い出深い経験をさせていただきました。
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