青ざめる。
夕刻時、私は配達のために車を走らせていました。
ご来店のお客様もあったので普段より早く出発し、いつもの道が工事中ということもあり、山あいの細い田んぼ道を走行していました。
「!!?」
鋭角三叉路から抜け出た折に、ふと左目の端に車と人影がうつりました。
一旦は通り過ぎたものの、気になってバックギアに切り替え10メートルほど戻ってみると・・・・・
車の後輪が両方とも脱輪して、2.5メートルほど下の田んぼの用水路に落ちそうになっているところを、助手席に座っていたであろう作業服のおじさんが車の外から必死に窓をつかんでいるところでした。
私はすぐさま車から飛び出し
「手伝いますよ!」
と車に手をかけました。
もう前輪は両方とも地面に着いていません。
運転席にはハンドブレーキを握り締めてブレーキを踏みしめている運転手のおじさんが残っています。
「ロープがあれば引っ張るのですけど?」
「いや、ない><;」
「運転手の方、降りますか?」
「ブレーキ踏んでないとずり落ちる><;」
万事休すです。
(万一のことを考えると、中途半端に車から降りかけているときに転落するよりも車の中にいるほうがいいのかな??)
(ロープさえあれば!ロープさえあれば!!)
と頭の中がもどかしく感じます。
運転手の方は電話で応援を呼んでらっしゃいますが、その間も車はジリ・・ジリ・・と動いているのが手にかかる負荷で感じ取れます。
・・・・・・と
「あ!!!」
車が手の中からするりと抜けて、目の前にいた運転手のおじさんが姿を消しました。
私たちの目の前で車が一回転して落下し、崖下のあぜ道に横転した状態になりました。
(!!しまった!! 助けることができなかった!!><;)
車外にいた助手席のおじさんもあわてて崖下に走り出します。
私も「大丈夫ですか!!? 意識があるなら返事してください!!」
と呼びかけます。
・・・・・・・しかし、返事がありません。
私は青ざめました。
人はこんなにあっけないものなのかと、落胆していたところ・・・
「!!!」
横転した車の上の窓から運転手さんの姿が見えました。
「お怪我はありませんか!?」
「いや~肩ば打ったばい・・・」
と、気丈にも歩いて上って来ます。
「よかったですね~!ひどいお怪我がなくて^^」
「うん、よかったばい。田んぼに落ちたら迷惑かけるところやった・・」
その後は警察が事故処理をするということなので、私は仕事に戻りました。
今でも車を握り締めていた手の感覚が変な感じです。
しかし、本当に無事でよかった。私は結局何の役にもたたなかったですけどね^^;
ところで、今回は写真がございません。
携帯を持ってはいたのですが、人の不幸を写真に撮る気には到底なれませんでした。
先月の秋葉原事件では、まさにその瞬間を納めようと携帯の写真をバシャバシャ撮っているところがニュースで流れましたが、もしそれを「現代人」と呼ぶのなら、私は旧人類で十分満足ですね^^
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